「求人を出しても応募が来ない」
「採用できても若手がすぐ辞めてしまう」
近年、多くの中小企業が人材確保に苦戦しています。特に東京都では企業間の採用競争が激しく、給与や賞与だけで人材を集めることが難しくなっています。
そんな中で注目されているのが、東京都の**「ES(社員満足度)向上による若手人材確保・定着事業助成金」**です。
この助成金は、若手人材の採用・定着につながる福利厚生制度の導入を支援する制度です。
ただし、
- 社宅を導入すれば必ず対象になる
- 食事補助を始めれば助成される
- とりあえず申請すれば通る
という制度ではありません。
実際には、
✅ 若手比率の要件がある
✅ 2つ以上の取組が必要
✅ 「新たな取組」でなければ対象外
✅ 専門家派遣が必須
など、見落としやすいルールがあります。
この記事では、公募要領や支給要綱をもとに、経営者が実務で失敗しないためのポイントをわかりやすく解説します。
制度概要|福利厚生を強化して若手人材の採用・定着を支援
本助成金は、若手人材の確保・定着に課題を抱える東京都内の中小企業等を対象に、社員満足度(ES)向上につながる福利厚生制度の導入を支援する制度です。
東京都が支援する理由は明確です。
若手人材は今、
- 給与
- 働きやすさ
- 福利厚生
- 健康支援
- ワークライフバランス
を重視して企業を選んでいます。
つまり、求人票に書ける福利厚生の充実が、そのまま採用力につながる時代です。
本制度では、
- 住宅の借上げ
- 食事等の提供
- 健康増進サービス
の導入費用を助成することで、若手人材から選ばれる企業づくりを支援しています。
助成内容|助成率・上限額・支援期間
助成率は一律で2分の1です。
対象となる事業は次の3つです。
| 事業 | 助成率 | 助成上限額 |
|---|---|---|
| 住宅の借上げ | 1/2 | 200万円/年 |
| 食事等の提供 | 1/2 | 50万円/年 |
| 健康増進サービスの提供 | 1/2 | 50万円/年 |
助成対象期間は最長3年間です。
例えば住宅借上げの場合、
- 1年目 200万円
- 2年目 200万円
- 3年目 200万円
と、最大600万円の支援を受けられる可能性があります。
福利厚生を強化したい企業にとっては非常に大きな支援制度です。
実は重要|住宅借上げには個別上限がある
住宅借上げについては勘違いが多いポイントがあります。
年間200万円の上限があるため、
「高額な社宅を1戸借りれば上限まで使える」
と思われがちです。
しかし実際は、
- 家賃・管理費等の上限:月82,000円/戸
- 助成額の上限:月41,000円/戸
という個別上限があります。
つまり、1戸だけで年間200万円を使うことはできません。
複数戸の借上げを組み合わせて活用する制度です。
申請前に資金計画を立てる際は必ず確認しておきましょう。
助成率の加算措置はない
最近の補助金では、
- 賃上げ加算
- 小規模事業者加算
- DX加算
などがあります。
しかし本助成金にはそのような加算制度はありません。
助成率は全事業共通で1/2です。
そのため、
「助成率を上げる」
のではなく、
「対象経費を正しく計上する」
ことが重要になります。
対象地域
対象地域は東京都です。
申請できるのは、
- 東京都内に本社または事業所がある企業
- 都内事業所で勤務する従業員向けに制度を導入する企業です。
全国向け制度ではありませんので注意しましょう。
対象者|申請できる企業の条件
この助成金は誰でも申請できるわけではありません。
特に重要なのが次の3要件です。
① 若手従業員(35歳未満)の割合が30%以下
例えば、
- 従業員20人
- 若手従業員7人
の場合、
7÷20=35%
となり対象外です。
② 入社3年以内の若手従業員が10%以下
若手社員が定着していない企業を支援するための制度設計になっています。
③ 過去1年間に採用活動を行っている
求人広告掲載や採用活動の実績が必要です。
採用活動を行っていない企業は対象になりません。
対象経費と実務ルール
住宅の借上げ
対象となる経費は、
- 家賃
- 管理費
- 共益費
- 礼金
- 更新料
- 仲介手数料
などです。
一方で、
- 敷金
- 保証金
- 引越費用
- 駐車場代
- 駐輪場代
- 鍵交換費
は対象外です。
また、社宅規程の整備も必要になります。
食事等の提供
対象となるのは、
- 置き型社食
- オフィスコンビニ
- ウォーターサーバー
- コーヒーマシン
- 弁当の定期配送
- 出張型食堂
などです。
ただし、
コンビニで購入した弁当代を支給する
昼食代を現金で支給する
といった方法は対象外です。
健康増進サービス
対象例は、
- ヨガ講座
- 健康セミナー
- 法定外健康診断
- 産業医面談
- 健康管理アプリ
- マッサージチェア
- 昇降式デスク
などです。
なお、健康増進サービスのみ、
35歳以上の従業員を対象とした取組でも対象になる
という例外があります。
最大の落とし穴|「新たな取組」でなければ対象外
この助成金で最も多い勘違いです。
住宅借上げ、食事提供、健康増進サービスのいずれも、
支援申込日の1年前から支給申請日までの間に継続して実施していた取組は対象外
です。
例えば、
- 既に社宅制度を運用している
- 既に置き型社食を導入している
- 既に健康アプリを利用している
場合、そのままでは対象になりません。
つまり、
「今までやっていなかった福利厚生を新たに導入する」
ことが助成の前提です。
実務上、最も見落とされやすいポイントなので注意しましょう。
申請方法と注意点
本助成金は、いきなり申請する制度ではありません。
流れは次の通りです。
① 支援申込
↓
② 専門家派遣(最大3回)
↓
③ 取組計画作成
↓
④ 支給申請
↓
⑤ 審査
↓
⑥ 支給決定
↓
⑦ 事業実施
↓
⑧ 実績報告
↓
⑨ 助成金受給
専門家派遣は無料ですが、必須です。
中小企業診断士や社会保険労務士などの専門家が計画作成をサポートしてくれます。
申請スケジュール
令和8年度の募集予定は以下の通りです。
前期
令和8年5月12日~8月7日
募集企業数:30社
後期
令和8年8月17日~11月13日
募集企業数:30社
年間合計60社です。
しかも先着順のため、
「締切直前に申し込めばいい」
という考えは危険です。
対象になりそうな企業は早めに動くことをおすすめします。
審査員はどこを見るのか?
採択される企業は共通して次の点が整理されています。
採用課題が明確
なぜ若手が採用できないのか。
なぜ離職してしまうのか。
数字で説明できることが重要です。
福利厚生と採用が結び付いている
導入する制度を求人票や採用サイトでどうPRするのか。
ここが重要です。
継続できる計画になっている
助成金終了後も制度を続けられることが求められます。
活用事例
建設業
地方採用向け社宅制度
+
腰痛予防セミナー
IT企業
置き型社食
+
健康管理アプリ
製造業
工場近くの借上げ住宅
+
弁当定期配送
介護事業者
職員住宅
+
マッサージチェア導入
どれも採用時に訴求しやすい福利厚生です。
申請前チェックリスト
□ 東京都内の中小企業である
□ 若手従業員(35歳未満)が30%以下
□ 入社3年以内の若手が10%以下
□ 過去1年間に採用活動を実施している
□ 新たな取組である
□ 2つ以上の取組を実施する
□ 専門家派遣を受ける
□ 事業者負担50%以上を確保する
□ 対象外経費を含めていない
□ 実績報告まで対応できる
戦略的な結論
この助成金は、単なる福利厚生支援制度ではありません。
本質は、
「若手人材から選ばれる会社をつくるための助成金」
です。
特に、
- 社宅制度がない
- 食事補助がない
- 健康経営施策がない
という企業は、採用市場で不利になりやすい状況です。
一方で、本制度は
- 最長3年間
- 助成率1/2
- 住宅は年間最大200万円
という手厚い支援があります。
ただし、
「新たな取組」
「2事業以上」
「先着60社」
という厳しい条件もあります。
そのため、まずは自社が対象になるかを確認し、採用戦略とセットで活用を検討することが成功への近道です。
ES(社員満足度)向上による若手人材確保・定着事業助成金
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