東京都が実施する「課題解決型技術開発促進事業」は、単なる研究開発助成金ではありません。
本制度は、“都市課題を解決する製品・サービス”を社会実装するための試作品開発を支援する制度です。
特に令和8年度は、「2050東京戦略」と連動し、
- 防災・減災
- DX
- 高齢者支援
- 暑さ対策
など、東京都が重点的に取り組むテーマに予算が集中しています。
そのため、採択されるために重要なのは「技術力」だけではありません。
「東京都の課題を、どう解決するのか」
ここが審査の本質です。
この記事では、公募要領・チラシ・公開スケジュールをもとに、
✅ 補助内容
✅ 対象経費
✅ 審査基準
✅ 実務上の注意点
✅ 不採択になりやすいポイント
までわかりやすく解説します。
|制度概要|課題解決型技術開発促進事業とは?
本事業は、東京都中小企業振興公社が実施する助成制度です。
正式名称は、
「課題解決型技術開発促進事業(試作品開発・改良支援)」
です。
東京都が掲げる「2050東京戦略」に基づき、都市課題の解決に資する製品・サービスの開発を支援することを目的としています。
重要なのは、本制度が“研究支援”ではなく、「事業化支援」である点です。
つまり、
❌ 技術研究だけ
❌ 学術目的
❌ 将来的に検討したい段階
では厳しいです。
一方で、
✅ 市場投入が見えている
✅ 顧客課題が明確
✅ 社会実装イメージがある
✅ 東京都の政策課題と整合している
場合は高く評価されます。
特に近年は、
- GX(脱炭素)
- 防災DX
- 介護テック
- AI活用
- スマートシティ
関連テーマが強い傾向です。
|補助内容|上限額・補助率・対象期間
令和8年度の主な補助内容は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成上限額 | 最大2,000万円 |
| 助成率 | 助成対象経費の2/3以内 |
| 助成対象期間 | 最長1年9か月 |
| 対象地域 | 東京都 |
| 申請方法 | Jグランツ電子申請のみ |
試作品開発系助成金としては、東京都でもかなり大型の制度です。
また、本制度は開発終了後に「販路拡大助成」へ接続できる可能性があります。
つまり、
「開発」→「販促」→「市場投入」
まで東京都が後押しする構造になっています。
これは他制度にはない大きな特徴です。
|支援テーマ|採択されやすい4分野
本事業では、以下4テーマのいずれかに該当する必要があります。
① 持続可能で安全・安心な東京の実現
例:
- 防災・減災
- セキュリティ
- 感染症対策
- 子どもの安全対策
最近は、
- 防災DX
- AI監視システム
- ドローン活用
などのテーマが強い傾向です。
② 高齢者・障害者支援
例:
- 介護ロボット
- 見守りシステム
- 福祉機器
- アクセシビリティ
特に、
「介護従事者の負担軽減」
は東京都の重点課題です。
介護人材不足と結び付くテーマは評価されやすいです。
③ DX(デジタルトランスフォーメーション)
例:
- 業務自動化
- AI分析
- データ活用
- 業界特化SaaS
最も応募が多い分野です。
そのため、
「なぜ自社技術でなければならないのか」
を明確にしないと埋もれます。
単なる業務効率化だけでは弱いです。
④ 暑さ対策 🌡️
令和8年度で特に注目されているテーマです。
例:
- 熱中症対策
- 空調制御
- 温度モニタリング
- 遮熱設備
東京都は猛暑リスクを都市課題として強く認識しています。
今後も継続的な予算投入が期待される分野です。
|対象者|申請できる事業者
主な対象者は以下です。
- 東京都内の中小企業
- 個人事業主
- 中小企業団体
- 都内創業予定者
ただし、実務上は“事業実態”が非常に重要です。
例えば、
- バーチャルオフィスのみ
- 実態不明
- 開発体制が存在しない
場合は厳しいです。
審査では、
「本当に東京都内で事業活動を行っているか」
をかなり見られます。
また、開発体制も重要です。
「代表1人だけで大型開発を行う」
ような計画は、実現性で不利になりやすいです。
|対象経費|実務で最もミスが多いポイント
対象経費は主に以下です。
- 原材料・副資材費
- 機械装置・工具器具費
- 委託・外注費
- 直接人件費
- 専門家指導費
- 規格認証費
- 産業財産権出願費
特に重要なのは「直接人件費」
本制度は、人件費を大きく計上できる点が特徴です。
ただし、ルールはかなり厳格です。
対象になる作業
例えば、
- 要件定義
- 設計
- プログラミング
- 試験
- 評価
などです。
対象外になる作業
以下は対象外です。
❌ 会議
❌ 打合せ
❌ スケジュール管理
❌ 広報活動
❌ 展示会準備
ここを混ぜると、完了検査で減額されます⚠️
よくある減額・不採択パターン
① 作業日報が曖昧
NG例:
- 「開発作業」
- 「打合せ」
OK例:
- API連携仕様検討
- UI画面遷移設計
- 温度センサー精度検証
かなり具体的に書く必要があります。
② 汎用品を計上
以下は原則NGです。
- パソコン
- タブレット
- カメラ
「本事業専用」である説明が必要です。
③ 相見積不足
実務上、非常に多いミスです。
1件または1契約あたり税抜100万円以上の場合は、申請時点で「2者以上の相見積書」が必要です。
特に、
- 機械装置費
- 委託・外注費
で漏れやすいです。
書類不備で審査対象外になるケースもあるため注意してください。
④ 外注丸投げ
本制度は、
「主要部分を自社で開発する」
ことが重要です。
開発の大部分を外注すると、不採択リスクが高まります。
|申請方法|Jグランツ限定なので注意
申請は「Jグランツ」のみです。
郵送申請はできません。
また、GビズIDプライム取得が必須です。
ここで毎年つまずく企業が非常に多いです。
発行まで数週間かかるケースもあるため、早めに取得してください。
特に締切直前は、
- GビズID未取得
- Jグランツ不具合
- 添付漏れ
による申請断念が多発します。
「最終日に出せばいい」は危険です。
|申請スケジュール|第2回公募まで見据えて動くべき
本事業は令和8年度に「2回」公募予定です。
第1回に間に合わなくても、第2回での申請が可能です。
| 項目 | 第1回 | 第2回 |
|---|---|---|
| 申請受付 | 令和8年6月4日(木)~7月3日(金)17:00 | 令和8年10月9日(金)~11月13日(金)17:00 |
| 書類審査 | ~令和8年8月下旬 | ~令和9年1月中旬 |
| 面接審査 | ~令和8年10月上旬 | ~令和9年2月上旬 |
| 交付決定 | 令和8年11月30日(月) | 令和9年3月31日(水) |
| 助成対象期間 | 1年9か月以内(令和8年12月1日~令和10年8月31日) | 1年9か月以内(令和9年4月1日~令和10年12月31日) |
※締切は17:00厳守です⚠️
※申請はJグランツのみ対応です。
特に本事業は「面接審査」があるため、無理に第1回へ出すより、第2回に向けて事業計画を磨いた方が採択率が上がるケースも多いです。
ただし、第2回にすると助成対象期間のスタートが【令和9年4月1日】となります。
つまり、
- 今年中に開発を始めたいのか
- 来年度から本格開発するのか
によって、選ぶべき回が変わります。
スピード重視なら第1回、計画熟成を優先するなら第2回というように、自社の開発ロードマップと資金計画を踏まえて戦略的に判断することが重要です。
|審査基準|審査員はここを見ている
審査は主に以下5項目です。
- 適合性
- 優秀性
- 市場性
- 実現性
- 妥当性
採択の本質は「市場性」
技術だけでは通りません。
審査員は、
「誰が、なぜ、いくらで買うのか」
を見ています。
面接審査で特に注意すべきポイント
出席できるのは、
- 代表者
- 役員
- 従業員
のみです。
以下は同席不可です。
❌ 顧問
❌ 経営コンサルタント
❌ 委託先企業
❌ 外部エンジニア
つまり、
「一緒に開発を行う予定の外注先担当者」
であっても同席は認められません。
同席の事実が発覚した場合、審査に重大な影響を及ぼす可能性があります。
面接審査で落ちる会社の特徴
❌ 技術説明だけ
審査員は技術者だけではありません。
経営視点で説明できないと厳しいです。
❌ 東京都課題と結び付かない
単なる業務効率化では弱いです。
「東京都の社会課題にどう貢献するか」
を説明する必要があります。
❌ 数字がない
例えば、
- CO2削減率
- 作業時間削減率
- 人件費削減率
など、定量評価が必要です。
|落とし穴|不採択・返還になるケース
ここは非常に重要です⚠️
① 交付前発注
交付決定前の契約・発注は対象外です。
毎年かなり多いミスです。
② 計画変更を勝手に行う
以下は事前承認が必要です。
- 開発内容変更
- 外注先変更
- 経費変更
無断変更は減額リスクがあります。
③ 完了検査前の営業・販売行為
ここは見落とされがちな重要ポイントです。
助成事業の完了検査前に、
- 販売開始
- 有償提供
- 予約受付
- 販売チラシ配布
- Web掲載
- 営業活動
などを行うと、助成対象外になる可能性があります。
特に、
「ユーザーテストのつもりで有償提供してしまう」
ケースは危険です。
発覚した場合、助成金が支払われないリスクがあります。
④ 試作品完成が間に合わない
本制度は、
「試作品完成」
が前提です。
未完成の場合、助成対象外になる可能性があります。
⑤ 量産設備を購入
本制度は「試作品開発」が対象です。
量産設備は対象外です。
|活用事例|採択イメージを具体化する
事例①|建設DX企業
テーマ
安全・安心
内容
AIカメラによる現場事故予測システム
採択ポイント
- 労災削減
- 建設人材不足
- インフラ維持
との整合性。
事例②|介護事業者
テーマ
高齢者支援
内容
離床検知+見守りシステム
採択ポイント
- 夜勤負担軽減
- 人材不足対策
- 介護DX
が明確。
事例③|設備会社
テーマ
暑さ対策
内容
工場向け温熱AI制御システム
採択ポイント
- 熱中症対策
- 電力削減
- GX推進
を数値化できている点。
|チェックリスト|申請前に必ず確認したいポイント
✅ GビズIDは取得済みか
✅ 東京都課題と結び付いているか
✅ 顧客課題が明確か
✅ 数値効果を説明できるか
✅ 外注丸投げになっていないか
✅ 100万円以上の相見積を取得しているか
✅ 作業日報運用を設計しているか
✅ 試作品完成までのスケジュールが現実的か
✅ 面接審査で経営視点を説明できるか
✅ 助成対象開始時期と開発計画が一致しているか
✅ 完了検査前に営業・販売を行わない運用になっているか
|まとめ|この助成金は「社会課題×事業化」が全て
この助成金は、
「研究支援」
ではありません。
本質は、
“東京都が抱える課題を、民間技術で解決する”
ことです。
採択される企業は、
✅ 社会課題を理解している
✅ 顧客が明確
✅ 数字で説明できる
✅ 開発管理ができる
✅ 事業化まで見えている
企業です。
逆に、
❌ 技術だけ
❌ 研究だけ
❌ ふわっとしたDX
は厳しいです。
また、本制度は採択後の管理もかなり細かいです。
- 作業日報
- 証憑管理
- 外注管理
- 中間報告
- 完了検査
まで含めて、事前に運用設計する必要があります。
「良い技術がある」と、「助成金で採択される」は別物です。
申請前の戦略設計で、採択率は大きく変わります。
課題解決型技術開発促進事業
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